サミュエル・ウルマン博物館
長年にわたって、サミュエル・ウルマン(1840-1924)及び彼の散文詩「青春」は、日本人によって親しまれてきました。しかしながら、米国内、また、彼が死ぬまでの40年間を過ごし、福祉面で地域社会に大きく貢献した、ここアラバマ州バーミングハム市におきましても、彼の名を知る人はあまりいません。
ミュエル・ウルマン博物館(以下ウルマン博物館)は、そんな彼の社会的、教育的そして宗教的イデオロギー及び働きを改めて見つめなおし、彼のヴィジョンを前面に押し出すために創立されました。ウルマン博物館は、UAB(the University of Alabama at Birmingham - アラバマ州立大学バーミングハム校)の施設であり、日本及びアメリカの諸企業及び一般市民からの援助金及び努力によって成り立っています。ウルマン博物館は、訪れる人々に、ウルマン氏の人生を探究する機会を与え、また彼の詩によって新たなる力を得ていただくための施設です。
青春
原作 サミュエル・ウルマン
翻訳 岡 田 義 夫
青春とは人生の或ある期間を言うのではなく、心の様相ようそうを言うのだ。
優れた創造力、逞たくましき意志、炎もゆる情熱、怯懦きょうだを却しりぞける勇猛ゆうもう心しん、
安易あんいを振り捨てる冒険心、こう言う様相を青春と言うのだ。
年を重ねただけで人は老いない。理想を失う時に初めて老いがくる。
歳月は皮膚のしわを増すが、情熱を失う時に精神はしぼむ。
苦悶くもんや、狐疑こぎや、不安、恐怖、失望、こう言うものこそ恰あたかも長年月
の如く人を老いさせ、精気ある魂たましいをも芥あくたに帰せしめてしまう。
年は七十であろうと十六であろうと、その胸中に抱き得るものは何か。
曰いわく驚異への愛慕あいぼ心しん、空にきらめく星辰せいしん、その輝きにも似たる
事物じぶつや思想に対する欽仰きんぎょう、事に処する剛毅な挑戦、小児の
如く、求めて止まぬ探究心、人生への歓喜と興味。
人は信念と共に若く 疑惑と共に老ゆる。
人は自信と共に若く 恐怖と共に老ゆる。
希望ある限り若く 失望と共に老い朽くちる。
大地より、神より、人より、美と喜悦きえつ、勇気と壮大、そして
偉力いりょくの霊感れいかんを受ける限り、人の若さは失われない。
これらの霊感が絶え、悲歎ひたんの白雪が人の心の奥までも蔽おおい
つくし、皮肉ひにくの厚氷がこれを固くとざすに至れば、この時にこそ
人は全くに老いて、神の憐あわれみを乞こうる他はなくなる。
ふりがな 粟倉健二